先日、こちらのブログ記事で、年下のきょうだいに年上のきょうだいのお下がりをあげる時に、きょうだい喧嘩を減らすために、気をつけないといけないことについて書きました。
今回の記事では、同じ「お下がり」のテーマで、
お下がりについて子どもと話せば、様々なトピックスも話せるようになる
という方法を3つ紹介したいと思います。英語と日本語の語りかけ例文も書いたので、皆さんがおうちで話されている言語で話してみてください!
なお「おうち英語」をされている方は、英語で下のような親子対話を行う前に、必ずこちらの記事(おうち英語がOKな時もNGな時もある)もご覧ください。
目次
子どもの許可をもらう
「お下がりをあげる」ということは、お兄さん・お姉さんのものを他人にあげるということです。だから毎回、お下がりをきょうだいにあげたい時に必ず許可をもらうようにしましょう。決して 「あげるのは当たり前」みたいにならないことが大事です。
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こういった数秒の対話を行うことによって、
- 子どもの意見を聞いて、許可をもらった(子どもへの尊重を示す)
- ひとつの社会問題について自然に触れられた(子どもの社会認識アップにつながる)
お下がりをきょうだいにあげたくないと言ったら?
語りかけ①の例文では、親が選択肢を与えているため、子どもに「いやだ」とか「あげたくない」と言われる可能性があります。
この時に慌てないで、「あ! これはまた別の学びのチャンスだ!」と思ってください。
クリティカルシンキングを伸ばすチャンスに変えよう
例えば、語りかけ①のあとに、「いやだ!あげたく ない!」と子どもが答えたら、次の語りかけ②のように親が語りかければ、クリティカルシンキングの能力につながります。
※クリティカルシンキングの定義はこちらの用語集をご覧ください。
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ここで大事なのは、
子どもの選択を決して責めないこと
です。
アメリカでは、教室の中で議論や意見交換をする時、相手の意見や気持ちを否定しないことをベースにしています。
「国際バカロレア」のような国際カリキュラムの議論式の教室でも全く同じです。
まず、相手の思っていることを「自分の意見と違うけどそれでも聞きたい! 知りたい!」という気持ちにならないと、建設的な意見交換ができません。
子どもに「どうしてあげたくないの?」と聞く時に、「ええ? なんで? そんなおかしいよ」とか「ええ? ママ、それを聞いてショックだね」などのような顔をするのはご法度です。
「あなたの気持ちを知りたい! 教えて!」という顔(声のトーン)にしたほうが、子どもから正直な意見が出るようになります。
なお、子どもの気持ちと意見を聞く時には、レバイン式子育ての基礎も忘れないでおきましょう。
子どもが何らかの希望(「〜したい!」とか「〜したくない!」とか)を伝えてくれる瞬間は、いつもクリティカルシンキングを伸ばすいいチャンスです!
なぜかというと「そうなの? それはなぜ?」と聞くことができるからです。これは3歳から始められるクリティカルシンキングの練習にもなります。
非認知能力を高めるチャンスに変えよう
非認知能力のひとつに「自分の気持ちを理解して管理する」能力があります。
レバイン式子育てのフレームワークの中には、日頃の子育ての中で自然と親子でこのスキルを高めるために「社会性情動の学習(SEL)」というアメリカで非常に人気のある教育システムを取り入れています。
子どもの「いやだ! 洋服をあげたくない!」という気持ちは、とても強い気持ちです。その気持ちをきっかけに、建設的に「気持ちについて話し合うこと」ができる絶好のチャンスです。例えば、
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語りかけ③はレバイン式子育てのフレームワークの中に取り入れている「社会性情動の学習(SEL)」です。
エンパシーを教えるチャンスに変えよう
さらに、子どもの気持ちに寄り添うこともできます。子どもの気持ちは「価値のあるもの」なので、親もその気持ちを理解できると話すことで、グローバル子育てで非常に大事にされている「エンパシー」を教えることができるようになります。例えば、
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ここでのポイントは、こうした会話をすることによって、
- 子どもの気持ちを理解しようとしている見本を見せていること
- 自分自身の気持ちが少しずつ理解するためには親から「今の気持ちの理由はこれ? それともこれ?」などのように選択肢を与えること
こういうちょっとした対話でも、子どもの非認知能力の土台がしっかりと作れます。
子どもが自分自身の気持ちを理解することができるまで選択肢を出せばいいですし、それでも「お下がりをあげたくない」理由がはっきりと出てこなければ、次のようなフォローで会話を終わらせればいいでしょう。
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これは、多くの親御さんからすると「ええ? でも、私の言うことを聞いてほしい」と思われるかもしれません。でも、これはもはや「お下がり問題」じゃなくないのです。人権の問題です。自分の気持ちを理解できて、その気持ちをちゃんと相手に伝えられるかどうか。そういう大きな問題ですね。
レバイン式子育てでは、こういった「自己肯定感」が一番大事になるので、語りかけ⑤のような解決策は子どもの成長に、そして未来につながる一番の解決策だと思います。
まとめ
「お下がり問題」はただただ親の金銭的な負担を減らすのではなく、子どもの
- クリティカルシンキング能力
- 非認知能力
- エンパシー
- 社会問題意識
- 自分の気持ちを理解する能力
などにつなげていくことができます。
本当に10〜15秒ていどの対話(レバイン式ではこれは「小さじ一杯」と呼んでいます)ですが、こうした対話を日頃からしている子どもと、していない子どもの差は、少しずつ広がっていくようになります。
ぜひ皆さんも、このように、「お下がり」はチャンスとして捉えて、お子さんとたくさん対話をしてみてください!
これは「きょうだい」と関係なく、お下がりを他人にあげる時にも全く同じ語りかけができるので、ぜひ実践してみてください。